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2020年度 研究シーズ

小型で高出力な中赤外Er:YAPレーザーの開発

核融合科学研究所・准教授 安原 亮 核融合科学研究所・助教 上原 日和

研究キーワード

中赤外レーザー , レーザー加工 , ガスセンシング

研究概要

我々のグループでは、波長2.92μmで発振する極めて小型かつ高出力な固体レーザー発振器を世界に先駆け開発することに成功しました。
波長3μm近傍には、OH伸縮振動モードに起因する強い吸収バンドが存在します。そのため、この波長のレーザーを用いることで、水分を含有した生体組織やガラス材料、OH基を有する樹脂材料などに対して強い相互作用が誘起され、高品位な微細加工が期待できます。
我々の開発したエルビウム添加イットリウムアルミニウムペロブスカイト(Er:YAP)レーザーは、半導体レーザーを励起光源とした長さ10mm前後の極めて小型な発振器であり、波長2.92μmにおいて5Wを超える連続波出力を高いビーム品質で得ることができます。また、受動Qスイッチング、能動Qスイッチングによるパルス発振動作も可能です。小型で比較的安価なシステムでありながら、極めて高い出力を有することから、レーザー加工やセンシング分野にブレークスルーをもたらす革新的なレーザー光源です。

図1: 開発したレーザー発振器

想定される応用先・連携先

近年、モバイルフォンや車載ディスプレイに対して軽量化や自由形状化といった新たな付加価値が求められており、機能性を付与した積層樹脂フィルムから成るディスプレイパネルが開発、上市されています。一般的に用いられるPET樹脂の吸収極大波長は、Er:YAPレーザーの発振波長2920nmとよい一致を示します。そこで、PET樹脂フィルムの加工検証実験をおこなった結果、極めて高品位かつ高速な切断加工を実証することに成功しました。
今後は、レーザー加工機メーカーなどと共同でEr:YAPレーザーを搭載した産業グレードの中赤外レーザー加工機の開発を目指したいと考えています。また、ガスのリモートセンシングや同位体計測応用も視野に入れ、関連企業との連携を検討しています。

アピールポイント

我々の開発したEr:YAPレーザーは、半導体レーザーを励起光源とした長さ10mm前後の極めて小型な発振器であり、波長2.92μmにおいて5Wを超える連続波出力を高いビーム品質で得ることができます。また、受動Qスイッチング、能動Qスイッチングによるパルス発振動作も可能であり、熱的加工にとどまらず、高ピーク出力パルスでの微細加工も可能です。小型で比較的安価なシステムでありながら、極めて高い出力を有することから、レーザー加工やセンシング分野にブレークスルーをもたらす革新的なレーザー光源です。

論文情報

  • ‌‌Hiroki Kawase, and Ryo Yasuhara, “2.92-μm high-efficiency continuous-wave laser operation of diode-pumped Er:YAP crystal at room temperature,” Optics Express 27, 12213-12220 (2019).
  • ‌Hiyori Uehara, Shigeki Tokita, Junji Kawanaka, Daisuke Konishi, Masanao Murakami, Seiji Shimizu and Ryo Yasuhara, “Optimization of laser emission at 2.8 μm by Er:Lu2O3 ceramics,” Optics Express 26, 3497-3507 (2018).
  • Hiroki Kawase, Hiyori Uehara, Hengjun Chen, and Ryo Yasuhara, “Passively Q-switched 2.9μm Er:YAP single crystal laser using graphene saturable absorber,” Applied Physics Express 12, 102006 (2019).

関連する特許出願番号・特許番号

出願番号:特願2018-076779
発明の名称:レーザー装置

出願番号:特願2020-058899
発明の名称:可飽和吸収体およびレーザ発振器

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