超塑性金属を用いた異材接合における熱応力緩和
研究キーワード
異材接合 , 熱応力緩和 , 超塑性中間材 , 相変態誘起クリープ変形
セールスポイント
- 熱応力緩和技法として幅広く応用可能であり、従来の接合よりも高強度化が可能です。
- 高熱負荷下における除熱機器のための拡散接合など、幅広い分野での応用が可能です。
研究概要
核融合炉において、タングステン(W)と鉄鋼材料(ODSS)の接合が求められる部位も想定されている。しかしながら、WとFeは大きく熱膨張係数が異なるため、接合後の冷却中に大きな熱応力に晒される。このような状況では、脆性的な挙動を示すWに亀裂が入りやすく、接合強度が著しく低下する。そこで、これら異材間に特殊な熱サイクルを加えた場合にのみ超塑性が発現する金属(S50C)を中間材として配置し、熱応力緩和を行った。
応用事例・使用用途など
高い除熱機構を備えた装置では、金属学的特性の大きく異なった材料を接合する場合がある。しかしながら、そのような接合では、接合後に高い熱応力が発生することが懸念される。そのような熱応力の緩和技法は核融合炉ダイバータの他、冷却系統を持つ発電所やエンジンといった部位への応用も可能であると考えている。
研究内容
[関連分野]本発明は、中間材を用いて、脆性材料と金属材料を拡散接合した後の冷却段階において発生する熱応力を除去する緩和技術に関するものである。この技術が適用される装置・製品は、高温の物質を冷却する除熱システムおよびそれを支える構造体が考えられる。
[背景技術]この分野の熱応力緩和技法としては、従来、異材両者に対し、濡れ性を有する「ろう材」が中間材として用いられてきた。しかしながら濡れ性に依存するろう付け接合では高強度化が困難であった。さらに一般に用いられるろう材は低融点合金が用いられるが、接合体製造後の高温下における使用が制限されるほか、接合母材とは大きく化学組成が異なる中間材となるため、接合部での機械的特性が母材とは大きく異なってしまう。そこで高い接合界面強度が図ることができる拡散接合法を試みた。その一方で、直接の拡散接合では非常に大きな熱応力が発生することが明らかになった。
[本研究のポイント・効果など]そのため熱応力緩和のために炭素鋼を中間材として使用することを提案した。その中間材は母材となる鉄鋼材料(ODSS)と近い特性を持つにもかかわらず特殊な熱処理下で非常に容易に変形する変態超塑性という現象を引き起こすことが知られている。この超塑性変形特性を接合後の後熱処理間で応用し、異材間の熱力緩和を行った。図1には温度履歴に伴う接合体に発生する熱応力の様子と後熱処理による緩和の概念を示す。
関連する特許出願番号・特許番号
特願2015-048318、特許第6300323号(2018)