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2020年度 研究シーズ

高温等方静水圧焼結接合試験装置(HIP装置)

核融合科学研究所・教授 室賀 健夫 核融合科学研究所・准教授 菱沼 良光 核融合科学研究所・助教 能登 裕之

研究キーワード

高温等方静水圧加圧(HIP) , 異材接合 , 焼結

セールスポイント

  • ‌高温・高圧の等方加圧によって複雑な形状の焼結や異材接合が可能です。
  • ‌特殊な環境下での熱処理が可能になり、先進材料の開発に貢献できます。

研究概要

将来の核融合炉に向けた高性能・多機能な特性を有する先進材料の開発が重要である。本装置の特徴は、200MPa(約2000気圧)までの等方静水圧下において、2000℃までの高温熱処理を可能とするものである(図1)。この装置を用いて、画期的な異材接合技術や先進材料の開発を実施している。また、補間設備として図2に示すArガス循環精製機構付の大型グロ-ブボックスや、最近では300MPa(約3000気圧)までの冷間等方静水圧加圧(CIP)装置も整備している。現在、W/Cuの異材接合や新規Cu合金の開発が行われている。

図1: HIP装置の概観図

応用事例・使用用途など

HIP装置は、高温度下での不活性ガスの等方加圧という特徴を生かして、種々の材料における焼結・異材接合分野で応用されている。例えば、粉末焼結の困難な材料の高密度焼結、複雑形状した焼結-成型の一体加工、さらにはステンレス銅へのCuの内張接合など多岐にわたる。上記の成形技術の他に、金属やセラミックス材料の残留空隙除去などの組織改善にも応用されている。

図2: Arガス循環精製機構付大型グロ-ブボックス

研究内容

[背景技術]国際熱核融合実験炉(ITER)以降の原型炉において、ダイバータのヒートシンク材料として低放射化フェライト鋼が検討されてきた。しかし、その熱伝導性の観点から、フェライト鋼よりも⾼熱伝導性の優れた他の材料が待望されている。そこで、熱伝導性に優れる銅系材料に注⽬し、耐照射特性や⾼強度特性が付与された新規⾼機能性銅合⾦の開発を進めている。新規⾼機能性銅合⾦の開発において、これまでに低放射化フェライト鋼の⾼温強度や耐照射特性を⾶躍的に向上させた「酸化物分散強化(ODS)法」を適⽤した。ODS法は⾦属⺟材中にナノメートルオーダーの酸化物を分散させることによって機械強度特性や耐照射特性を向上させている。我々は、ODS法の知⾒をもとに機械的合⾦化(MA)法と高温等方静水圧加圧(HIP)法による⾼密度焼結を組み合わせた新規酸化物分散強化銅(ODS-Cu)の開発に着⼿した。今回HIP装置による⾼密度焼結の前準備として、ppm以下の低酸素分圧環境下での試料調整や軟鋼キャプセルへの粉末充填及び封切作業をArガス循環精製機構付の⼤型グロ-ブボックスにて実施している。
[本研究のポイント・効果など]酸化アルミニウム分散銅を⼀例に紹介する。図3は、HIP焼結後の微細組織及び結晶粒径における合⾦化時間の影響を⽰す。合⾦化の進⾏に従って、結晶粒径は細かくなり、数μmオーダーの微細粒と既存の分散強化銅(GlidCop®)とほぼ同等の硬さ値が得られている。Glidcopの粒径と⽐較しても⼤きい結晶粒であるにも関わらず、同等の硬さ値が得られたことはMA-HIP法の新規性を⽰すものである。

図3: MAによる合⾦化時間がHIP後の結晶粒径に与える影響
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