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2021年度 研究シーズ

GWASを用いた改良メダカの表現型 ―遺伝子型相関解析

基礎生物学研究所・特任教授 成瀬 清

研究キーワード

Genome Wide Association Studies (GWAS) , 改良メダカ , 選抜育種 , 遺伝子タイピング

研究概要

10年ほど前、非常に鮮やかな緋色の体色を示すメダカが発見され「楊貴妃」と命名され販売がはじまりました。今までのヒメダカにはない強いオレンジ色のメダカは人気を博し、高い値段で取引されるようになりました。その後、それまでに知られていた体色や体型に関する突然変異体との交配によって様々な体色や形態をもつメダカ系統が作出され現在では「改良メダカ」として販売されています。
本研究は、この様々な形質をもつ「改良メダカ」のゲノム塩基配列を決定し、その形質に特異的に連鎖するDNA多型をGenome Wide Association Studies (GWAS)によって同定し、その配列を特異的に検出できるPCRプライマーを設計することで効率的に改良メダカを作出できる方法を樹立することを目的としています。今回の研究では既にゲノムDNAを抽出した改良メダカ20系統とさらに28系統を加えた合計48系統を選び、各系統2個体の計96個体の全ゲノム配列を決定します。解析の対象は楊貴妃、ミユキ、オロチ(全身黒)、ヒレ長、部分ヒレ長、出目、ラメ、二色、三色など10程度の新規形質に加え、解析系のベンチマークを目的として既に原因が判明しているヒカリ(zic1/zic4)、ダルマ(wnt4b)、アルビノ(Tyr/OCA2)を解析に含めています。これらの系統についてゲノム配列を決定し、GWASを行うことで、それぞれの形質にリンクするDNA多型を同定するとともに、その領域を特異的に認識するPCR用プライマーを設計することで交配による新「改良メダカ」の樹立を容易にする方法論を確立します。これにより「改良メダカ」業界ひいては観賞魚業界に貢献するとともに、廃棄処分されるメダカを減らすことで野外への改良メダカ廃棄による遺伝子汚染の可能性を軽減できます。

想定される応用先・連携先

本研究によって明らかになった遺伝マーカーを用いた育種技術を提供することで、国内のメダカ生産業者との連携による観賞魚産業への寄与が期待できます。またキンギョ、錦鯉への応用や他の観賞魚にその知見を応用することでより多様な観賞魚を遺伝育種によって作出する基盤が構築できます。

アピールポイント

本研究の実施により体色や形態など従来のメダカとはその表現型が大きく異なるメダカを人為的に作出するための遺伝基盤を理解することができます。これにより効率的に改良メダカを作成することができるようになると期待されます。
メダカはキンギョ等に比べて世代時間が3 ヶ月程度と短いため、得られた知見の検証も容易です。また小型であるので一般家庭でもより簡単に飼育を開始できることから、潜在的なユーザー数もより多いと考えられます。また海外への輸出実績もあり、本研究成果の海外展開も期待されます。

論文情報

  • Kimura, T., Takehana, Y., and Naruse, K. (2017). Pnp4a is the causal gene of the medaka iridophore mutant guanineless. G3: Genes, Genomes,Genetics 7,1357-1363.
  • Kimura, T., Nagao, Y., Hashimoto, H., Yamamoto-Shiraishi, Y. I., Yamamoto, S., Yabe, T., Takada, S. Kinoshita, M., Kuroiwa, A., and Naruse, K.(2014). Leucophores are similar to xanthophores in their specification and differentiation processes in medaka. Proc Natl Acad Sci 111(20), 7343-7348.
  • Nagao, Y., Suzuki, T., Shimizu, A., Kimura, T., Seki, R., Adachi, T., Inoue, C., Omae, Y., Kamei, Y., Hara, I., Taniguchi, Y., Naruse. K., Wakamatsu, Y., Kelsh, RN., Hibi, M. and Hashimoto, H. (2014). Sox5 functions as a fate switch in medaka pigment cell development. PLoS Genetics, 10(4), e1004246.
  • Moriyama, Y., Kawanishi, T., Nakamura, R., Tsukahara, T., Sumiyama, K., Suster, M. L., Kawakami, K., Toyoda, A., Fujiyama A, Yasuoka Y, Nagao, Y., Sawatari, E., Shimizu, A., Wakamatsu, Y., Hibi, M., Taira, M., Okabe, M., Naruse, K., Hashimoto, H., Shimada, A. and Takeda, H. (2012). The Medaka zic1/zic4 Mutant Provides Molecular Insights into Teleost Caudal Fin Evolution. Current Biology, 22(7), 601-607.
  • Kon, T., Omori, Y., Fukuta, K., Wada, H., Watanabe, M., Chen, Z., Iwasaki, M., Mishina, T., Matuzaki, S. Yoshihara, D., Arakawa, J., Kawakami, K., Toyoda, A., Burgess, S. M. Noguchi, H. and Furukawa, T. (2020). The Genetic Basis of Morphological Diversity in Domesticated Goldfish. Current Biology, 30(2), 2260-2274 e6.
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