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2021年度 研究シーズ

映像内の他者との円滑なコミュニケーションを診断する脳内指標の探索

生理学研究所・教授 磯田 昌岐

研究キーワード

他者 , 映像 , オンライン , コミュニケーション

研究概要

実社会では他者の行動観察を通して抽出した情報を自己の行動決定に役立てています。これまでの研究から、社会の複雑化とともに発達してきた大脳新皮質、とくに腹側運動前野や内側前頭前野とよばれる脳領域が、他者の行動情報の処理・利用に重要な役割を果たすことが示唆されてきました。しかし近年、私たちのコミュニケーションは目の前に実在する相手(実在他者)だけでなく、テレビ会議の相手(映像他者)や接客ロボット(物体他者)などにまで広がっています。さまざまな他者とかかわりあう際にこれらの脳領域がどのように機能し、どのように情報のやり取りをしているのかはわかっていませんでした。開発者らは霊長類動物をモデルとする研究をおこない、腹側運動前野から内側前頭前野への脳情報の流れが、実在他者とのやりとりで最も多く、物体他者とのやりとりで最も少なくなることを明らかにしました。さらに腹側運動前野から内側前頭前野への情報流を遮断すると、他者、特に実在他者の行動情報を自己の行動決定に利用することができなくなることを見出しました。

想定される応用先・連携先

今後ますます発展するウェブ社会では、映像を介する他者との円滑なコミュニケーションが求められます。基礎研究で得られる脳活動指標をコミュニケーションの診断ツールとして利用することで、企業における効率的なウェブ会議システムや教育現場における効果的なリモート授業法の開発が加速されるものと期待されます。

アピールポイント

任意の脳領域の神経活動を、ミリメートル以下の空間解像度とマイクロ秒程度の時間解像度で計測・解析することが可能です。

論文情報

  • Ninomiya T, Noritake A, Kobayashi K, Isoda M (2020) A causal role for frontal cortico-cortical coordination in social action monitoring. Nature Communications 11: 5233.
  • Yoshida K, Go Y, Kushima I, Toyoda A, Fujiyama A, Imai H, Saito N, Iriki A, Ozaki N, Isoda M (2016) Single-neuron and genetic correlates of autistic behavior in macaque. Science Advances 21: e1600558.
  • Yoshida K, Saito N, Iriki A, Isoda M (2012) Social error monitoring in macaque frontal cortex. Nature Neuroscience 15: 1307-1312.
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