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2021年度 研究シーズ

上皮透過性の人為的制御による薬物送達補助剤をスクリーニングできる培養細胞系

生理学研究所・教授 古瀬 幹夫

研究キーワード

上皮 , 血液脳関門 , タイトジャンクション , 薬物送達

研究概要

タイトジャンクションは、上皮細胞や血管内皮細胞等の透過障壁としての機能に重要な細胞間接着構造であり、例えば、脳内に流入する物質を厳密に制限している血液脳関門を形成していることが知られています。もし、タイトジャンクションのバリア機能を人為的に弱めることができれば、今までタイトジャンクションが邪魔をしていた部位にも、医薬品を届けることができるようになると期待されます。タイトジャンクションのバリア機能を弱める方法として、タイトジャンクションを形成しているクローディンという接着分子の作用を阻害する物質を見つけて、それを投与することが考えられます。ところが、クローディンには多数のサブタイプが存在するため、そのような物質もクローディンサブタイプによって異なることが予想されます。各クローディンサブタイプに作用する物質を特定するためには、クローディンを発現しておらずタイトジャンクションを持たない上皮細胞株に、特定のクローディンサブタイプのみを発現させてタイトジャンクションを再構成し、そこに様々な物質を投与してタイトジャンクションのバリア機能が低下するのを評価すればよいはずです。今回、開発者らは、もともと発現していた複数のクローディンサブタイプの遺伝子をゲノム編集技術で破壊することにより、タイトジャンクションを完全に失った上皮細胞株を樹立することに世界で初めて成功しました。この細胞に個々のクローディンサブタイプを再発現させることにより、そのサブタイプだけで形成されたタイトジャンクションをもち、十分なバリア機能を有する上皮細胞を取得できることも確認しました。

想定される応用先・連携先

薬物送達システム(DDS)、医薬品メーカー

アピールポイント

上記のクローディン欠失上皮細胞に各クローディンサブタイプを戻し発現させた細胞は、サブタイプごとのタイトジャンクション形成阻害剤を化合物ライブラリーからスクリーニングするのに使用できます。例えば、血液脳関門に必須なクローディン5だけを発現させた細胞をすでに樹立しており、この細胞でスクリーニングを行えば、血液脳関門を超えて脳腫瘍に薬物を送達するための補助剤が得られる可能性があります。

論文情報

  • Otani T, Nguyen TP, Tokuda S, Sugihara K, Sugawara T, Furuse K, Miura T, Ebnet K, Furuse M. (2019) Claudins and JAM-A coordinately regulate tight junction formation and epithelial polarity. J Cell Biol. 218:3372-3396

関連する特許出願番号・特許番号

出願番号 :特願2019-226655
発明の名称:クローディン欠損上皮細胞株の製造方法、クローディン欠損上皮細胞株、クローディン欠損上皮細胞株を含むタイトジャンクション機能抑制剤のスクリーニング方法、及びクローディン欠損上皮細胞株を含むタイトジャンクション機能抑制剤のスクリーニングキット

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