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2021年度 研究シーズ

「一斉警報通知防災システム」構想の実現に向けた社会実験

分子科学研究所・技術課長 繁政 英治

研究キーワード

防災ラジオ , LoRa , 災害情報伝達 , Jアラート

研究概要

⑴ 防災ラジオの起動に連動して家電製品の制御を開始するシステム
開発者らは、岡崎市や盛岡市などで使用されている緊急告知防災ラジオ(以下、防災ラジオ)の自動起動を常時監視する親機と、親機からの無線信号を受け取り、様々な動作を開始する子機からなるシステムを既に開発しています。
本システムは、例えば、日常生活で使用しているLED照明器具やTVなどを子機に接続するだけで、JアラートやLアラート、緊急地震速報などによる防災ラジオの起動に連動してLED照明を点滅させる、TVを自動起動させる等の手段で、緊急情報を素早く伝達し、早期の避難誘導を促すものです。

図1: 一斉警報通知システムの概略図

⑵ 研究開発の現状と目指すところ
⑴に挙げたシステムについて、親機と子機間の通信範囲を100m程度に限った小規模な検証実験を実施しました。また、当初予定していた2.4GHz帯の無線は、用途が多く混信が懸念されたため、これをLoRaと呼ばれる920MHz帯の規格に変更し、通信範囲を100mから3kmへと格段に拡張しました。この条件下で、親機・子機の台数を限定した基本動作の確認は完了しており、引き続き実証試験を進めています。
本研究では、従来のシステムを拡充し、一台の子機が受け取った情報をさらに別の子機に転送するメッシュ型構造を導入しました。これにより、通信範囲内で通信障害が発生しても様々な経路でバックアップした通信が可能となるため、信頼性をさらに拡張・強化できます。このメッシュ型構造を導入した親機と子機を相当数配置したシステムを構築し、実際の災害発生を想定した広範囲実証試験を行い、自治体や企業とも共同して、システムの実用化に向けた開発と検証を進めています。

想定される応用先・連携先

  1. 想定する適用先・応用先
    既存の防災ラジオ製造・販売企業、防災関連機器企業、IoT関連企業

  2. 応用された結果解消される社会課題・技術課題
    インターネット環境が十分でない過疎地や独居老人の増加により、災害時、或いは急病等緊急時に連絡が遅れ、被害の拡大や発見の遅れが懸念されています。一方、既存の緊急通報装置はインターネット環境の新規導入や維持費が必要であり、利用者の負担となります。本システムの応用により、これらの課題の解決が見込まれます。

アピールポイント

本計画では「LoRa」と呼ばれる無線伝送方式を採用しています。この無線伝送方式を導入することで、通常の通信範囲内で通信障害が発生しても様々な経路からバックアップした信頼性の高い通信を実現することができます。また無線モジュール間の中継機能も実装しているため、バケツリレー状の長距離伝送にも展開できることが他にはない強みであると考えています。
本システムでは親機が防災ラジオの起動を検出しますが、検出対象は防災ラジオに限定されず高い汎用性を有しています。住宅用火災警報器や温度センサ、人感センサなどを検出対象とするこで多様な適用が可能です。
本研究で開発したコア基板に接続するモジュールを差し替えることで、接続先の電気的条件を容易に変更することができます。このインターフェースは、Pmod規格に準拠しており、市販のモジュールも使用できます。

関連する特許出願番号・特許番号

出願番号 :特願2019-214632
発明の名称:通知システム、通知システムにおける制御装置、および通知システムにおける制御方法

特許番号 :特開2020-30719
発明の名称:緊急告知防災ドッキングステーション

特許番号 :特開2018-026807
発明の名称:警報連動型防災システム

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