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2022年度 研究シーズ

超低消費電力・低雑音動作するマイクロ波帯超伝導増幅器

国立天文台・准教授 小嶋 崇文 国立天文台・教授 鵜澤 佳徳

研究キーワード

マイクロ波 , ミリ波 , 超伝導 , 高感度 , 増幅器 , 低消費電力

研究概要

国立天文台では、HEMTやHBT等の半導体増幅デバイスでは動作が難しいマイクロワットオーダーの超低消費電力条件で動作するマイクロ波帯超伝導増幅器を考案しました。本超伝導増幅器は、電波天文用受信機にミリ波サブミリ波帯のダウンコンバータとして用いられてきた超伝導体-絶縁体-超伝導体(SIS)接合に基づく周波数変換デバイス(ミキサ)を2つ用い、一方を周波数アップコンバータ、もう片方をダウンコンバータとして接続することにより構成します(図1)。それぞれに同一周波数のミリ波帯局部発信電力を入力すると、マイクロ波帯の入力信号はアップコンバータでミリ波帯に、ダウンコンバータでマイクロ波帯として出力されることから、結果的に入出力周波数が同一になります。SISミキサはアップコンバージョンおよびダウンコンバージョンの各々の過程で周波数変換利得を有することが確認されており、本構成では電力増幅効果を得ることができます。さらに、SISミキサは量子雑音限界に近い低雑音動作、かつ、直流付近から20 GHz程度まで広帯域動作が可能です。したがって、半導体増幅器に比べて3桁程度低い低消費電力で、それと同等以上の性能で動作する、理想的な特性を有する増幅器となる可能性を秘めています。
国立天文台では、これまで原理実証に成功しており、数マイクロワット程度の消費電力で、10 dB以上の利得、10 K程度の雑音温度特性で動作することを確認しています。現在回路を最適化しており、今後はさらなる低雑音化・広帯域化やコンパクト化を図る予定です。

図1:考案した超電導増幅器構成
図2:実験に用いたSISミキサの写真.このSISミキサを 2つ用意し、ミリ波帯の導波管を介してモジュール を従属接続することで増幅器を構成する。

想定される応用先・連携先

電波天文やリモートセンシング等を目的とした高感度観測が必要とされる分光実験装置やイメージング装置への導入、量子ビット研究などへの応用が期待されます。また、それらの大規模アレイ化に有用な増幅デバイスであると考えられます。

アピールポイント

  1. 物理温度4 Kステージ上で動作し、冷却型半導体増幅器と同等以上の広帯域低雑音性能が期待できます。
  2. 冷却型半導体増幅器に比べて 3 桁程度低消費電力化が可能で、冷却ステージ上の熱負荷を抑えることができるため、システムアレイ化を容易にします。
  3. 超伝導増幅器は進行波型超伝導パラメトリック増幅器などが提案されており、極めて低雑音な特性が示されています。一方、ポンプ光付近の周波数が使用できないことや、物理温度1 K以下での動作が必要になるなど実用性にやや難があると考えられています。提案した増幅器は汎用の4 K冷凍機を用いてもアレイ化が容易になると考えられます。

論文情報

  • T. Kojima, Y. Uzawa, and W. Shan, “Microwave amplification based on quasiparticle SIS up and down frequency converters” AIP Advances 8, 025206 (2018)
  • Y. Uzawa, T. Kojima, Y. Kozuki, Y. Fujii, A. Miyachi, T. Tamura, S. Ezaki, W. Shan, “An SIS-mixer-based amplifier for multi-pixel heterodyne receivers,” Proceedings Volume 11453, Millimeter, Submillimeter, and Far-Infrared Detectors and Instrumentation for Astronomy X; 114530Q (2020)

関連する特許出願番号・特許番号

出願番号  :特願2017-184211
米国特許番号:US10680567
発明の名称 :超伝導体ー絶縁体ー超伝導体接合を用いた低雑音マイクロ波増幅器

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