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2022年度 研究シーズ

ミリ波回路用高性能広帯域 ノッチフィルタ

核融合科学研究所・准教授 西浦 正樹

研究キーワード

ノッチフィルタ(バンドストップフィルタ) , ノイズ対策 , ギガヘルツ , 高周波 , 無線通信

研究概要

高性能広帯域ノッチフィルタを開発しました。本技術では、導波管の側面に空洞共振器を配置し、特定の不要な周波数の電磁波を除去し、必要な電磁波を通過させることが出来ます。空洞共振器の電場モードを制御することで、阻止帯域では狭帯域(<数百MHz)で高ノイズ除去(>60dB)、通過帯域では低損失の特性の達成に成功しました。このような高性能フィルタを実現するために、電磁界シミュレーションによる最適化とマイクロメートルスケールでの製作の高精度化にも取り組みました。図1はノッチフィルタの主導波管内部の電磁波の伝播の様子を示しています。特定の周波数が阻止され、出力側で電場強度が減衰していることから、ノッチフィルタとして有効に機能していることが分かります。ノイズ除去帯域と減衰量は自由に設計でき、周波数は220GHzまで対応可能です。
新しい技術開発も実施しています。導波管の設計帯域より高いノイズの除去は従来困難でしたが、そのような高い周波数のノイズを除去できるノッチフィルタを開発しました。例えば、図2がQバンド導波管に対して、Eバンドである77GHzを60dB以上除去するノッチフィルタです。これまでバンドパスフィルタでは除去しきれなかったノイズも、本技術を適用することで、急峻なノッチ形状で有効な通過帯域を広く作ることが出来ます。
今後は、取り扱える周波数領域をサブテラヘルツまで拡張すること、フィルタの小型化と高性能化に向けた研究開発を行う予定です。

図1: ノッチフィルタの電磁波TE10 モードの伝播シミュレーション例。
図2: 電磁波解析シュミレーションによりフィルタ性能の最適化と小型化を実現します。写真 は高性能Qバンド77GHzノッチフィルタ。

想定される応用先・連携先

本技術はプラズマ計測で用いるミリ波回路において利用実績があり、移動体無線通信基地局、次世代無線LAN、高周波計測器、ミリ波レーダ、車車間通信などに用いられるGHz帯のミリ波回路でのノイズ除去やシグナルコンディショニングに広く利用可能です。 本技術を利用することで、ミリ波利用が拡大した際に懸念される電波干渉ノイズの低減が期待できます。

アピールポイント

導波管に混入する特定の周波数のノイズを除去し、それ以外の周波数は通過させることができます。除去したいノイズの周波数と減衰量は任意に設計可能です。更に、従来は導波管の帯域より高い特定の周波数のノイズの除去が困難でしたが、本技術によって特定の周波数ノイズの除去を可能にしました。必要な信号を低ノイズで効率良く伝送でき、回路の保護の役割も果たします。基板タイプのフィルタより高性能です。

論文情報

  • M. Nishiura, T. Shimizu, S. Kobayashi, T. Tokuzawa, K. Ichinose, S. Kubo,
    “Q-band high-performance notch filters at 56 and 77 GHz notches for versatile fusion plasma diagnostics”
    Review of Scientific Instruments, 92 (2021) 034711, 1-4.
  • M. Nishiura, K. Tanaka, S. Kubo, T. Saito, N. Kenmochi, H. Nuga, R. Seki, T. Shimozuma, Y. Yoshimura, H. Igami, H. Takahashi, T. I. Tsujimura, R. Yanai, Y. Tatematsu,LHD Experiment Group
    “Collective Thomson scattering with 77, 154, and 300 GHz sources in LHD”
    Journal of Instrumentation, 15 (2020) C01002, 1-8.

関連する特許出願番号・特許番号

特許番号 :出願番号:特願2022-533132
発明の名称:ノッチフィルタ

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