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2023年度 研究シーズ

樹脂コーティングを用いた極低温機器の予冷時間短縮法

核融合科学研究所・教授 高畑 一也

研究キーワード

高性能伝熱面 , 伝熱促進 , 沸騰熱伝達 , 急冷 , 極低温冷媒

研究概要

極低温機器の配管、タンクなどを液体窒素や液体水素を用いて予冷する際、冷媒の消費量削減、時間効率の観点から予冷時間の短縮が重要となります。ところが、予冷過程の初期において、伝熱面に膜沸騰による蒸気相が発生し、伝熱を阻害することが知られています。本発明では、伝熱面に樹脂をコーティングし、その表面に微細なクラックを形成することで、予冷時間を80%以上も短縮できる高性能伝熱面を提供します。
具体的な事例として、銅板にフッ素樹脂を15μmの厚さで刷毛塗りし、常温で乾燥させました。そして、コーティングが完了した銅板を、液体窒素に沈めて急冷しました。その時の銅板の温度変化を図1に示します。290Kから90Kまでの予冷時間は、コーティング前が130秒だったのに対し、樹脂コーティングを施すと26秒まで減少しました。これは80%の予冷時間短縮になります。急冷後に樹脂表面を観察すると、図2のように、天然の泥層にできるマッドクラックに似た構造の、微細な表面クラックが発生していました。冷却中に樹脂の熱収縮によって形成されたと考えられます。そして、このクラック形成が、膜沸騰領域の蒸気相の発生を抑制し、伝熱を促進しました。

第1図:樹脂コーティングした銅板の急冷実験
第2図:急冷後の樹脂表面の顕微鏡写真

想定される応用先・連携先

液体窒素、液体水素などの液体冷媒の移送や貯蔵のための設備や、液体燃料ロケットの配管の予冷促進に応用することができます。
予冷時間が大幅に短縮され、冷媒の消費量も削減することができます。
生体細胞を急冷凍結するための装置に応用することもできます。より冷却速度を増し、細胞の生存率を上げることができます。


アピールポイント

従来の高性能伝熱面は、金属壁面に微細加工(柱状構造、多孔質構造)を施す手法が一般的でした。しかしながら、表面加工に特別な精密機械もしくは加圧・加熱装置が必要となり、広範囲、曲面への応用が難しく、また配管内壁への施工では、加工機械の挿入が難しいという課題がありました。本発明の樹脂コーティングであれば、加工機械や加圧・加熱装置を必要せず、刷毛塗り、ディッピング、スプレーなどの簡便な方法で施工ができます。

関連する特許出願番号・特許番号

出願番号:特願2023-65528
発明の名称:冷却構造

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