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2023年度 研究シーズ

大容量電顕データを実現する カーボンナノチューブ塗布テープ

生理学研究所・准教授 窪田 芳之

研究キーワード

CNT , 微細構造 , 神経回路 , 電子顕微鏡 , コネクトーム

研究概要

カーボンナノチューブ(CNT)塗布PETテープにより、走査型電子顕微鏡(SEM)を使った大容量高解像度電顕画像データセット:EMData(500 μm四方サイズ、倍率 5 nm/pix、30-40 nm切片厚、連続切片1500枚程度、数 TBのデータ容量)の撮影が可能です(Kubota et al., Nature Communications 2018, 9: 437)。生理学研究所では、Hitachiハイテクと産学連携共同研究で開発したSEM自動連続切片撮影アプリAuto Capture for Array Tomography(ACAT)を本格運用し、ラット大脳皮質のEMData撮影を実施しております。シナプス結合解析に十分な高解像度を持ちながら、神経細胞の樹状突起の多くを含むEMDataを撮影し、神経細胞シナプス入力の網羅的解析を実現しました(図1)。このCNT-PETテープの量産を視野に入れ、開発をすすめた結果、2022年3月末に、工場生産が実現しました。CNTは、導電性や高熱伝導性を有する微小(ナノサイズ)の炭素材料として様々な用途への応用が期待されております。CNTの新しい実用化製品を社会に創出し、電子顕微鏡観察のためのCNTテープの製品化を目的として、今回、商用的に作製できる実機試作レベルを狙った開発を実施しました。

想定される応用先・連携先

ナノ材料分野と脳科学分野の異なる研究分野の研究を融合させることで、CNTの新しい実用化製品を社会に創出したいと考えております。今後、脳コネクトミクス研究で活用されつつある新しい電子顕微鏡画像撮影システムを使った脳の大容量電顕画像データセット解析に、このCNT テープが広く使われることで神経科学研究に大きな進捗をもたらすと予想しております。将来的には、高解像度での脳組織の可視化により難病の原因究明等に資する脳機能の解明に貢献ができると考えます。さらに、あらゆる生体試料観察に応用できる技術であり、社会課題の解決にも役立つ可能性が高く、具体的かつ波及効果の大きな開発実績が期待できます。

アピールポイント

カーボン真空蒸着法でKaptonテープ表面に導電性をもたせる従来技術(20 – 6500 Mohm/□)に比べると、カーボンの定着が優れており、その結果、表面抵抗値を3000 ohm/□まで小さくすることができました。これにより、SEMで画像撮影時にチャージが生ずることもなく、きれいな電顕画像を撮影することが可能となりました。

論文情報

[1] Fang I, Monroe F, Novak SW, Kirk L, Schiavon CR, Yu SB, Zhang T, Wu M, Kastner K, Kubota Y, Zhang Z, Pekkurnaz G, Mendenhall J, Harris K, Howard J,Manor U (2021) Deep learning-based point-scanning super-resolution imaging. Nature Methods, 18, 406-416
[2] Kubota Y, Sohn J, Hatada S, Schurr M, Straehle S, Gour A, Neujahr R, Miki T, Mikula S, Kawaguchi Y (2018) A carbon nanotube tape for serial-section electron microscopy of brain ultrastructure. Nature Communications 9: 437

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