高分子固定化触媒の調製プロセスの確立
研究キーワード
高分子固定化ナノ白金触媒 , 高分子スルホン酸触媒 , 酸素酸化 , 直接エステル化 , フロー化学合成
研究概要
本研究では白金触媒およびスルホン酸触媒の大量調製法を確立し、これら触媒を充填した触媒カートリッジによる連続フロー反応を実施しました。白金触媒ではアルコール類やアルデヒド類の酸素酸化反応によるカルボン酸合成を実施し、続いてスルホン酸触媒を利用しカルボン酸をアルコールとの直接エステル化を実現する連続フロー反応を実施します。これら汎用性に富む新しい触媒の大量調製法を確立し、続いて触媒を利用した連続フロー工程を実践することで、触媒の市販化、触媒カートリッジの産業展開、さらには触媒工程の工業展開に道を拓こうとしています。
直接エステル化反応はその逆反応(エステルの加水分解)との平衡反応であり、そのため従来の直接エステル化工程では平衡定数を超える変換効率を達成することは原理的に不可能です。一方、本触媒を用いた連続フロー反応では酸触媒によって進行するエステル化反応生成物が速やかに酸触媒から分離されるため、生成物(エステル分子)の酸触媒加水分解を制御することが可能です。すなわち固定化触媒を利用するフロー反応はエンジニアリングであると同時に基礎科学に立脚した新しい反応制御法を与えうる新技術といえます。
想定される応用先・連携先
【高分子担持白金触媒】
応用1:カルボン酸化合物の酸化的合成
対応するアルコール原料やアルデヒド原料を酸素のみを酸化剤とするグリーンな工程でカルボン酸へと誘導します。例えばサリチル酸合成やアニオン性界面活性剤合成に適用可能です。
【高分子担持スルホン酸触媒】
応用2:直接エステル化の高効率化
脱水的直接エステル化法によるアクリル酸やサリチル酸のエステル誘導体合成を高効率で実施可能です。
応用1、2はいずれも連続フロー反応で実施可能。
アピールポイント
【高分子担持白金触媒】
本触媒はアルケンおよびカルボニルの水素化、および芳香族クロリドの還元的脱クロロ反応にも利用できます。またいずれの反応においても連続フロー反応、触媒の回収再利用、生成物への金属種の非混入を確認しています。これにより不飽和脂肪類の水素化による食品類の品質向上やPCB汚染水の無毒化などが実現すると考えています。
【高分子担持スルホン酸触媒】
直接エステル化工程では平衡定数を超える変換効率を達成することは原理的に不可能です。一方、本触媒を用いた連続フロー反応では酸触媒によって進行するエステル化反応生成物が速やかに酸触媒から分離されるため、生成物(エステル分子)の酸触媒加水分解を制御することが可能となります。
論文情報
【白金触媒関連論文】
- A Nanoplatinum Catalyst for Aerobic Oxidation of Alcohols in Water Yamada, Y. M. A.; Arakawa, T.; Hocke, H.; Uozumi, Y.
Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 704 –706 (査読あり)
DOI: 10.1002/anie.200603900- Aerobic flow oxidation of alcohols in water catalyzed by platinum nanoparticles dispersed in an amphiphilic polymer
Osako T, Torii K, Uozumi Y.
RSC Advances 2015, 5, 2647-2654 (査読あり)
DOI: 10.1039/c4ra14947e- Chemoselective continuous-flow hydrogenation of aldehydes catalyzed by platinum nanoparticles dispersed in an amphiphilic resin
Osako T, Torii K, Hirata S, Uozumi Y.
ACS Catalysis 2017, 7, 7371-7377 (査読あり)
DOI: 10.1021/acscatal.7b02604- Direct Dehydrative Esterification of Alcohols and Carbozylic Acids with a Macroporous Polymeric Acid Catalyst
Minakawa, M.; Baek H.; Yamada, Y. M. A.; Han, J.-W.; Uozumi, Y.
Organic Letters 2013, 15, 5798-5801 (査読あり)
DOI 10.1021/ol4028495- In-water and neat batch and continuous-flow direct esterification and transesterification by a porous polymeric acid catalyst
Baek H, Minakawa M, Yamada Y.M.A, Han J.W, Uozumi Y.
Scientific Reports 2016, 6, 25925 (査読あり)
DOI: 10.1038/srep25925- Second-Generation meta-Phanolsulfonic Acid-Formaldehyde Resin as a Catalyst for Continuous-Flow Esterification
Hu, H.; Ota, H.; Baek, H.; Shinohara, K.; Mase, T.; Uozumi, Y.; Yamada, Y. M. A.
Organic Letter 2020, 22, 160-163 (査読あり)
DOI: 10.1021/acs.orglett.9b04084
関連する特許出願番号・特許番号
特許番号 :特許第5358804号
国際出願番号:PCT/JP2005/022068
発明の名称:レジン担持白金クラスター触媒出願番号 :特願2018-078643
発明の名称:メタ-フェノールスルホン酸系樹脂およびその触媒としての利用