小型集積レーザー
研究キーワード
マイクロチップレーザー , セラミックレーザー , Yb,Ndレーザー , 擬似位相整合(QPM)非線形光学波長変換 , LN/LT , 水晶
研究概要
光の波長と同程度のミクロンオーダーで物質・材料の性質を制御する事で光波を高度に操る“マイクロ固体フォトニクス”に関する研究を展開してきました。そしてマイクロドメイン制御で物質に新たな光機能が発現でき、マイクロ共振器による高コヒーレント光・高輝度光発生が望めるようになりました¹⁻⁵⁾。この過程で1990年代には、レーザーとしては不適切とされていたYbレーザー、セラミックレーザーに着目、研究を先導し、2000年以降の幅広い展開に寄与してきました。そして、新たな非線形素子の開発を含めた物質・材料研究の成果として世界初のメガワット出力マイクロチップレーザー、さらにレーザーエンジン点火の自動車走行⁶⁻⁸⁾、一光子イオン化を可能とする真空紫外の波長118nm⁹⁾からコヒーレンス長に合せマイクロドメイン分極を制御する擬似位相整合(QPM)による新たな非線形素子の開発もあり波長11μmまでの中赤外⁴,¹⁰⁾、さらに波長0.1-0.8mm¹⁰⁾¹¹,¹²⁾とTHz波からミリ波に至る広帯域な高効率波長変換などを実証してきました。そして近年、中間層援用表面活性接合(il-SAB)に成功する事で一体型多ディスクレーザー構造が可能となり可能性が広がりました¹¹⁾¹³⁾。この接合による分布面冷却(DFC)多ディスクまたはチップ利得媒質構造は、小型高利得構成で、高出力・高強度レーザーが望めます。一方、多数の薄板水晶を張り合わせたQPM-水晶は高耐性で有るだけで無く固体材料での真空紫外までの波長変換素子となり得えます¹²⁾¹⁴⁾。このように物質・材料を制御する手法を極める事で、モジュール化された小型集積レーザー(TILA)による極限的な高輝度固体レーザーが望め、理研と連携し卓上XFEL¹¹,¹⁵,¹⁶⁾を可能とするレーザー駆動電子加速を推進させることで分子科学に新展開をもたらすだけで無く、TILAコンソーシアム¹⁷⁾と連携する事で衝撃波による新たなレーザー加工¹⁸⁾から非破壊計測、廃炉加速¹⁹,²⁰⁾、までイノベーション創出にも貢献できると期待しています。
参考文献
- T. Taira, et al., Opt. Lett. 16 (24) 1955 (1991).
- T. Taira, et al., IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron. 3 (1) 100 (1997).
- T. Taira, IEEE J. Sel. Top. Quantum Electron. 13 (3) 798 (2007).
- T. Taira, Opt. Mater. Express 1 (5) 1040 (2011).
- Y. Sato, et al., Scientific Reports 7, 10732 (2017).
- H. Sakai, et al., Opt. Express 16 (24) 19891 (2008).
- M. Tsunekane, et al., IEEE J. Quantum Electron. 46 (2) 277 (2010).
- T. Taira, et al., The 1st Laser Ignition Conference ’13, OPIC ’13,
Yokohama, April 23-26, LIC3-1 (2013). - R. Bhandari, et al., Opt. Express 21 (23) 28849 (2013).
- M. Miyazaki, et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 11, 6098 (2009).
- S. Hayashi, et al., Scientific Reports 4, 5045 (2014).
- S.W. Jolly, et al., Nature Commun. 10 (2591), 1 (2019).
- L. Zheng, et al., Opt. Mater. Express 7 (9), 3214 (2017).
- H. Ishizuki, et al., Opt. Mater. Express 8 (5), 1259 (2018).
- N.H. Matlis, et al., Nuclear Inst. and Methods in Physics Research A, 909, 27 (2018).
- http://www.riken.jp/en/research/labs/rsc/innov_light_src/laser_drive_electron_accel_tech/
- https://tila.ims.ac.jp/en/
- Y. Sano, T. Kato, Y. Mizuta, S. Tamaki, K. Yokofujita, T. Taira, T. Hosokai, Y. Sakino, Forces in Mechanics, 7(100080), 1 (2022).
- O. Saito, E. Sen, Y. Okabe, N. Higuchi, H. Ishizuki and T. Taira, 3(3), 031103 (2020).
- 大場弘則, 若井田育夫, 平等拓範, 電気学会誌, 142(2), 77 (2022).
想定される応用先・連携先
レーザー粒子加速に資する高性能レーザーの社会連携:
・製造業(レーザー切断,微細穴開け,表面処理,ピーニング,フォーミング,欠陥検査,質量分析など)
・インフラ(ビル・トンネル・橋梁の遠隔計測・打音検査,光超音波計測・欠陥検査,LIBS・廃炉加速など)
・医療(スキンセラピー,眼科手術,歯科治療,光超音波計測,MALDIなど)
・セキュリティ(テラヘルツ波発生・高感度検出,中赤外光発生・検出など)
アピールポイント
・シンプル,高輝度な小型レーザー
・高効率,多機能波長変換
論文情報
- L. Zheng, A. Kausas, T. Taira, "Drastic thermal effects reduction through distributed face cooling in a high power giant-pulse tiny laser," Opt. Mater.Express, vol. 7, no. 9, pp. 3214-3221 (2017).
- Y. Sato, J. Akiyama and T. Taira, "Process design of microdomains with quantum mechanics for giant pulse lasers," Scientific Reports, 7: 10732 (11 pages) (2017).
- K. Nawata, S. Hayashi, H. Ishizuki, K. Murate, K. Imayama, Y. Takida, V. Yahia, T. Taira, K. Kawase, and H. Minamide, "Effective terahertz wave parametric generation depending on the pump pulse width using a LiNbO₃ crystal," IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology, vol. 7,no. 5 , pp. 617-620 (2017).
- S. W. Jolly, N. H. Matlis, F. Ahr, V. Leroux, T. Eichner, A.-L. Calendron, H.Ishizuki, T. Taira, F.X. Kärtner, and A. R. Maier, "Spectral phase control of interfering chirped pulses for high-energy narrowband terahertz generation," Nature Communications. vol.10, art. no.2591 (2019).
- T. Kawasaki, V. Yahia, and T. Taira, "100 Hz operation in the 10 PW/sr·cm² class Nd:YAG Micro-MOPA," Opt. Express, vol. 27, no. 14, pp. 19555-19561 (2019).
- H. H. Lim and T. Taira, " >50 MW peak power, high brightness Nd:YAG/ Cr4+:YAG microchip laser with unstable resonator," Opt. Express, vol. 30, no. 4, pp. 5151-5158 (2022).
関連する特許出願番号・特許番号
特許番号:特許第3585891号 発明の名称:レーザー素子
特許番号:特許第4265287号 発明の名称:レーザー装置
特許番号:特許第4530348号 発明の名称:受動Qスイッチレーザ装置
特許番号:特許第4590537号 発明の名称:レーザ点火装置
特許番号:特許第4925059号 発明の名称:固体レーザーモジュール
特許番号:特許第5105358号 発明の名称:周期分極反転用部材及び周期分
極反転素子の製造方法
特許番号:特許第5281282号 発明の名称:配向多結晶材料及びその製造方法
特許番号:特許第5570027号 発明の名称:透光性多結晶材料とその製造方法
特許番号:特許第5557956号 発明の名称:受動Qスイッチ型固体レーザ装置
特許番号:特許第5630765号 発明の名称:レーザ点火装置
特許番号:特許第5688102号 発明の名称:光学材料及びその製造方法
特許番号:特許第5710982号 発明の名称:透光性多結晶材料とその製造方法
特許番号:特許第6245587号 発明の名称:レーザー部品
特許番号:特許第6261057号 発明の名称:選択増幅装置
特許番号:特許第6245629号 発明の名称:半導体レーザー励起固体レーザー
装置を利用する車載式点火装置
特許番号:特許第6281935号 発明の名称:Qスイッチレーザー装置
特許番号:特許第6324452号 発明の名称:パルス光発生装置
特許番号:特許第6562464号 発明の名称:受動Qスイッチレーザ装置
特許番号:特許第6583894号 発明の名称:Qスイッチレーザー装置
特許番号:特許第6632644号 発明の名称:光学素子の製造方法及び光学素子
特許番号:特許第6653096号 発明の名称:透光性生体留置デバイス及びその利用
特許番号:特許第6955302号 発明の名称:光学素子の製造方法及び光学素子