有限要素解析コードを用いた 熱、構造、電磁場等の解析
研究キーワード
有限要素法 , 構造応力解析 , 電磁界解析 , 流体解析 , ANSYS
研究概要
核融合科学研究所では、将来の核融合発電を早期実現するために、世界最大級の超伝導コイルを有する大型ヘリカル装置(LHD)を用いて、高温プラズマの閉じ込め研究を行っています。LHDの高磁場・高熱負荷環境において使用する機器を、十分な信頼性・安全性を確保しつつ、低コストで実現し、効率的に研究を推進するため、有限要素解析コード「ANSYS」を用いたシミュレーションに基づく研究開発活動を広範に展開しています。
例えば、大型ヘリカル装置LHDの真空容器内部では、「ダイバータ」と呼ばれる狭小空間において使用される真空ポンプがプラズマや周辺機器からの高い輻射熱環境下に置かれます。そのため真空ポンプには輻射熱を遮るシールドを設置しますが、同時に排気効果を阻害しない十分な開口も必要となります。そこで設計チームは、このような相反する設計要求をクリアするため、精緻な3D-CADモデルを構築し、輻射熱やシールドの冷却性能を考慮したシミュレーションを実施しました。この計算結果を構造設計に反映することで、厳しい設計要求に応えるデザインを実現し、実際にLHDの実験で運用しています(参考:https://www.nifs.ac.jp/NIFS-NEWS/pdf/243-2.pdf)[1]。また、大学との共同研究では、効率的なプラズマ生成方式を探索するために真空容器中にマイクロ波を導入した場合の電界強度分布の評価(図1)[2]や新概念に基づく核融合実験装置の構造応力解析、プラズマ輻射熱解析、渦電流による電磁力解析(図2)[3]等も行っています。
想定される応用先・連携先
核融合科学研究所では、主として磁場閉じ込めプラズマ実験装置での適用を念頭に置いて、装置本体、計測機器、プラズマ加熱装置等の開発を行っていますが、このような大規模で複合的な物理環境を扱う物理シミュレーションは、自動車、鉄道、航空産業など幅広い産業分野にも適用できます。これにより、少人数のエンジニアでも比較的短時間で多くのデザインを検証でき、その結果を機器開発へ迅速にフィードバックできます。また、試作コストが高い、あるいは想定される試験条件を再現するのが困難な場合など、物理試験にかかる時間やコストの低減にも役立ちます。
実際の共同研究では、既存あるいは設計中の構造や物理課題に対して、①最適な解析モデル作成、②必要十分な計算メッシュの設定、といった手順で計算条件を設定し、計算を実行後に③目的に適した結果表示を行います。また、3D-CADモデルの寸法値などをパラメータとし、複数の設計案をまとめて解析するといったことが可能です。
アピールポイント
高熱負荷、高磁場等の極限環境における熱、構造、電磁場、流体解析などの豊富な経験と実績があります。
複雑な3次元曲面を有するモデルや複合的な物理現象の解析が可能です。
論文情報
[1] Takanori Murase, et al., “Development of In-Vessel Cryo-Sorption Pump for LHD Closed Helical Divertor”, J. Plasma Fusion Res. 93, (2017) 213-221
[2] 河野星志、「ヘリオトロン J における有限要素法を用いた NBI プラズマ着火アシスト用マイクロ波の電界強度分布解析」、京都大学工学部電気電子工学科学士学位論文、2019
[3] Takanori Murase, et al., "Eddy current analysis for vacuum vessel of CFQS quasi-axisymmetric stellarator"Fusion Engineering and Design 161 (2020) 111869.