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2020年度 研究シーズ

大量の水素を溜め込まない再生不要のクライオポンプ

核融合科学研究所・教授 宮澤 順一

研究キーワード

クライオポンプ , 分子拡散ポンプ , 超高真空排気ポンプ , 連続運転

セールスポイント

  • クライオポンプと拡散ポンプの長所を併せ持つ大排気量超高真空ポンプです。
  • 大量の水素を溜め込まず、再生運転も不要です。

研究概要

超高真空ポンプとしては冷却パネルに水素を凝縮させるクライオポンプが主流ですが、水素貯留量が多いこと、再生運転が必要なこと、ヘリウム排気が困難なこと、などが問題となる場合があります。本発明の新型クライオポンプでは、凝縮した水素を機械的に掻き落とすことで水素貯留量を大幅に低減し、再生動作を不要としました。水素の一部を超音速ジェットとして循環し、拡散ポンプとして機能させることでヘリウムの排気も可能としました。

原理図

応用事例・使用用途など

核融合炉、プラズマ実験装置、超高真空実験装置、超高真空分析装置など、クリーンな真空が必要な装置において、従来型クライオポンプやターボ分子ポンプ、拡散ポンプの代替として使用できます。磁場中でも運転可能です。

CAD 図の例(カザマエンジニアリング㈱) http://www.keg.co.jp

研究内容

[関連分野]核融合プラズマ実験や材料分析など、超高真空を必要とする各種物理・化学実験分野。
[背景技術]大きな排気量が得られる超高真空ポンプとして、冷却パネルに水素を凝縮させるクライオポンプ、高速回転タービンで排気ガス分子に運動量を与えて排気するターボ分子ポンプ、油や金属の蒸気を噴出させて、それらの運動量を排気ガス分子に与えて排気する拡散ポンプが用いられています。
[従来技術の課題]例えば核融合炉での真空排気を考えた場合、従来型真空ポンプでは不十分な可能性があります。クライオポンプは水素の貯留量が多いこと、再生運転が必要なため連続運転が難しいことが大きな課題となっています。核融合炉では水素同位体が核融合してできるヘリウムを「灰」として排気する必要がありますが、ヘリウムは低温で凝縮しにくく、かつ固体にはならないため、クライオポンプでは排気が難しいことも課題です。ターボ分子ポンプは、核融合炉付近の強磁場中での運転が難しいことと、排気速度がクライオポンプに比べ小さいことが課題となっています。拡散ポンプは高真空側への油や金属の蒸気拡散がありえること、特に金属を用いる場合、水銀は採用できず、常温で液体の金属は高価で、低融点の金属はヒータが必要になる上に配管詰まりの懸念があることが深刻な課題です。
[本研究のポイント・効果など]本発明の新型クライオポンプは、凝縮した水素を機械的に掻き落とすことでポンプ内の水素貯留量を大幅に低減し、再生動作を不要としました。排気する水素の一部を超音速ジェットとして循環し、拡散ポンプとして機能させることでヘリウムの排気も可能となっています。高速回転部がないため、磁場中で使用することもできます。核融合炉での真空排気以外にも、プラズマ実験装置や各種分析装置などの超高真空装置においてクライオポンプやターボ分子ポンプ、あるいは拡散ポンプの代替となる真空排気ポンプとして用いることができます。

関連する特許出願番号・特許番号

特許第6578593号(2019)

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