MENU

2020年度 研究シーズ

液体の安定な自由表面流を生成する仕組み

核融合科学研究所・教授 宮澤 順一

研究キーワード

自由表面流 , ダイバータ , 気液反応促進 , 蒸散促進 , オブジェ

セールスポイント

  • 水や薬品、液体金属などの自由表面流を安定に生成できます。
  • 耐熱壁、化学実験、アロマ蒸散、オブジェなど、幅広い応用が可能です。

研究概要

液体の自由表面流には幅広い用途がありますが、安定な自由表面を生成するのは意外に困難です。例えば蛇口から出てくる水道水は、流量が少なければ安定しているように見えますが、実は1メートル位で液滴になってしまいます。大流量ではバシャバシャと飛び散りが大きくなるのはご存知のとおりです。この研究では、小流量から大流量まで、自由表面流を安定に作り出す仕組みを考え出しました。

らせん柱入りメッシュ管(左)、色付き水を流した様子(中)、透明なメッシュ管にLEDを入れて光らせた様子(右) 

応用事例・使用用途など

安定な自由表面流では、実効的に液体の表面積を増大させることができます。核融合炉やプラズマ実験装置で受熱機器(ダイバータ)として高熱負荷に耐える、化学実験で気液反応を促進させる、加湿器やアロマ発生器で液体の蒸散を促進させる、あるいは自由表面を発光させ癒し効果のあるオブジェとして用いるなど、幅広い応用が可能です。

自由表面流に熱負荷を与えた場合のシミュレーション例

研究内容

[関連分野]核融合炉、プラズマ実験、化学実験、環境機器、芸術
[背景技術]液体の鉛直自由表面流れをつくるには、①穴やスリット等から液体を自由落下させる、②並べたナイフエッジ等の固体の間に液体を流す、③板状あるいは棒状の固体に沿って液体を流す、等の方法が考えられますが、いずれも数m以上の長さに渡って安定な自由表面流れを得ることは困難でした。
[従来技術の課題]例えば液体をパイプに沿わせて鉛直方向に流しても、表面張力によって流体が集合し、パイプが露出してしまいます。液体の流量を増やすことである程度まではこの問題を回避できますが、液体が周囲に飛び散るという別の問題が発生します。
[本研究のポイント・効果など]本研究ではパイプの周囲にワイヤーをらせん状に巻きつけ、さらにその周囲をメッシュで巻いた「らせん柱入りメッシュ管」を発明しました。パイプの周囲に設けられたらせん構造によって液体はパイプの周方向に運動し、パイプ全体を覆うように流れます。液体に与えられる遠心力による液体の飛散は、らせん構造の周囲に巻いたメッシュで防ぎます。液体は遠心力によってメッシュから滲み出し、重力によって下方へと流れる自由表面を形成します。らせん柱入りメッシュ管に用いる材料には、セラミック被覆やメッキなどの腐食防止対策を施すことも可能です。ヒーター及び熱電対を内蔵させることで温度制御を行うこともできます。核融合炉における超高熱負荷ダイバータへの適用、液体金属からの水素同位体抽出、気液反応促進、蒸散促進などといった幅広い応用が考えられます。

関連する特許出願番号・特許番号

特願2015-112782

研究シーズを検索・絞り込み