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2020年度 研究シーズ

曲げやすく丈夫で冷やしやすい高温超伝導導体

核融合科学研究所・教授 宮澤 順一 核融合科学研究所・教授 柳 長門 核融合科学研究所・准教授 田村 仁 核融合科学研究所・助教 後藤 拓也 核融合科学研究所・特任研究員 寺崎 義朗

研究キーワード

高温超伝導導体 , 小型強磁場電磁石 , 医療用マグネット , 物性研究用マグネット , プラズマ実験用マグネット , 核融合炉用マグネット

セールスポイント

  • 複雑形状や小型の高温超伝導コイルが容易に製作できます。
  • 核融合を始め、医療や物性など、幅広い分野での応用が可能です。

研究概要

テープ状の高温超伝導線材を10~20層に重ねたものをフレキシブルチューブ等で束ねて導体とし、これでコイルを製作してから全体を低融点金属で含浸して固めて用いるというWISE (Wind and Impregnated Stacked Elastic tapes) 導体を発明しました。コイル巻線時にはとても曲げやすく、低融点金属で固めた後はコイル全体で力を支えるために非常に丈夫で、線材同士の隙間が金属で埋められているため冷やしやすい、という特徴があります。
WISE導体(模擬)の構成(左)と、曲げた様子(右)。写真のポリイミドテープは絶縁が必要な場合を想定したもので、無くても差し支えありません。高温超伝導テープ線材の枚数はフレキシブルチューブの内径によります。

応用事例・使用用途など

WISE導体は冷凍機を用いて熱伝導で冷却することができるため、小型装置で強い磁場が必要な場合などに適しています。小型で強力なモータへの応用も考えられます。レーストラック型コイル、あるいは野球のボールの縫い目のような形のベースボールコイル、ドーナツへ螺旋状に巻いた形のヘリカルコイルなど、複雑な形をしたコイルでも容易に作ることができます。
(上)低融点金属含浸前、及び(下)含浸後の直線WISE導体(総研大 松永信之介氏のご厚意による)。実験ではどちらも同じ電流まで通電できました。これは低融点金属を含浸しても超伝導性能は劣化しないという結果です。

研究内容

[関連分野]核融合、プラズマ実験、材料科学、医療
[背景技術]核融合炉への適用を目指して、高温超伝導マグネットの開発が進められてきました。これまでに開発されてきているのは、基本的に最初から固く、丈夫に作ってある高温超伝導導体です。これをどうやって曲げるか、曲げても超伝導マグネットとしての性能は劣化しないか、あるいはどうやって冷やすか、について研究が行われてきました。
[従来技術の課題]核融合プラズマを閉じ込めるため、ドーナツへ螺旋状に巻いた形のヘリカルコイルが使われます。最初から丈夫に作った導体では、このような複雑形状のコイルをどうやって作るのかが課題でした。小型の装置で高温超伝導による強い磁場を使って実験したいという場合や、小型モータに適用したいという場合など、高温超伝導導体を小さい曲率半径で曲げる必要があります。最初から固く丈夫に作ってある高温超伝導導体では、複雑形状や小型のコイルに適用することが難しいという課題もありました。
[本研究のポイント・効果など]本研究で発明したWISE導体は非常に曲げやすく、複雑形状や小型のコイルを容易に作成することができます。コイルには強い電磁力がかかるため頑丈さが求められます。WISE導体は低融点金属で固めてあり、コイル全体で電磁力を受け止める強固な構造となっています。線材に低融点金属が密着していて隙間がなく、熱伝導特性が高いため、冷却しやすいという特徴もあります。WISE導体と一緒に冷却配管をコイルに仕込むことで、より早い冷却が可能となります。この場合、冷却配管が鉄筋の役割を果たし、より強い電磁力に耐えられるようになるため、発生できる磁場が更に増加できるという効果も期待できます。

関連する特許出願番号・特許番号

特願2017-232731

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